
子どもが生まれると、家の中の景色は少しずつ変わっていきます。
それまで何気なく置いていた物が、赤ちゃんにとっては危険になることがあります。
低いテーブルの上の飲み物、床に落ちた小さな部品、手の届く棚に置いた洗剤、浴槽に残した水、窓の近くの家具。
大人にとっては見慣れた暮らしの一部でも、子どもは好奇心いっぱいに手を伸ばし、口に入れ、登り、引っ張り、のぞき込みます。
だからといって、親が一日中緊張して見守り続けなければならないわけではありません。
大切なのは、子どもの成長によって起こりやすい事故が変わることを知り、その時期に合わせて家の中を見直していくことです。
事故予防は、親を責めるためのものではありません。
子どもの「できるようになった」を喜びながら、安心して過ごせる環境を整えるためのものです。
この記事では、0歳から6歳頃までの家庭で意識しておきたい、暮らしの安全について整理します。
子どもの事故は、成長とともに変わっていきます
生まれたばかりの赤ちゃんは、自分で移動することはできません。
けれど、寝ている時間が長いからこそ、就寝環境による窒息や、大人用ベッド・ソファからの転落などに注意が必要です。
寝返りが始まると、思いがけない方向へ体が動くようになります。
はいはいを始めると、床や低い場所にある物へ自分から近づいていきます。
つかまり立ちや歩行が始まると、テーブルの上の物を引っ張ったり、キッチンや浴室へ移動したり、窓や家具によじ登ろうとしたりすることもあります。
さらに幼児期になると、行動範囲が広がり、外遊び、水遊び、自転車、道路、ベランダ、火や刃物など、注意したい場面も増えていきます。
昨日まで届かなかった場所に、今日は手が届く。
昨日まで登れなかった家具に、今日は登れる。
子どもの成長はうれしいものですが、安全対策は一度整えれば終わりではありません。
「今のわが子は、どこまで動けるようになっただろう」
「次にできるようになりそうなことは何だろう」
そんな視点で、少し先回りして環境を見直すことが、事故を防ぐ第一歩になります。
0歳頃にまず確認したい、眠る場所の安全
赤ちゃんが生まれて間もない時期は、眠る時間が長く、寝床まわりの環境がとても大切です。
赤ちゃんの顔まわりに、柔らかい寝具、枕、大きなクッション、ぬいぐるみ、衣類、タオルなどがあると、顔を覆ってしまう危険があります。
「かわいく整えてあげたい」という気持ちは自然なものですが、眠る場所は、見た目よりも安全を優先して、できるだけシンプルに整えることが大切です。
※赤ちゃんを迎える前に整えておきたい住まいの準備については、「赤ちゃんを迎える前に考えたいこと」でも詳しく紹介しています。
寝床まわりで確認したいこと
- 赤ちゃんの顔の近くに、柔らかい物や不要な物を置いていないか
- 大人用ベッドやソファの上で、赤ちゃんを一人にしていないか
- おむつ替え台や高さのある場所で、必要な物を取るために手を離す状況がないか
- ベビーベッドや寝床の周囲に、落下する物がないか
- きょうだいやペットが近くにいる場合、安全に眠れる場所を確保できているか
赤ちゃんは、まだ大きく動けないように見えても、足を動かしたり、体をひねったりして位置が変わることがあります。
「少しだけだから」「まだ寝返りしないから」と考えず、高さのある場所では手を離さないこと、眠る場所の周囲をすっきりさせることを意識したいですね。

口に入れる時期は、誤飲と窒息を防ぐ視点を
赤ちゃんは、手に取った物を口に入れながら確かめようとします。
これは発達の自然な過程ですが、家の中にある小さな物が、思わぬ誤飲や窒息につながることがあります。
特に注意したいのは、
- ボタン電池
- 小さな磁石
- 水で膨らむボール状の玩具
- 医薬品
- 洗剤や化粧品
- たばこや酒類
- 小さなおもちゃの部品
- シールや包装フィルム
- 小さく硬い食品や、噛み切りにくい食品
などです。
ボタン電池や複数の磁石、水で膨らむ玩具などは、誤飲すると重大な事故につながるおそれがあります。
また、年上のきょうだいが使うおもちゃには、乳幼児向けのおもちゃにはない小さな部品が含まれることがあります。
誤飲を防ぐために見直したいこと
- 床や低い棚に、小さな物が落ちていないか
- 電池を使う製品のふたが簡単に開かないか
- 医薬品や洗剤を、子どもの目と手の届かない場所に保管しているか
- きょうだいのおもちゃを乳幼児が触れる場所に置いていないか
- 玩具の対象年齢を確認しているか
- 食事中に歩かせたり、遊ばせたりしていないか
大人の目線では気づきにくい物も、床に近い子どもの目線ではすぐに見つかります。
一度、床に座ったり、はいはいをする子どもの高さまで視線を下げたりして、部屋を見回してみると、普段は気づかなかった危険が見つかることがあります。
※離乳食を始める前に知っておきたい準備や、無理なく続ける考え方については、「離乳食が始まる前に知っておきたいこと」も参考にしてください。
寝返り・はいはい・つかまり立ちが始まったら、転落と転倒に注意
子どもが自分で動けるようになると、転落や転倒への備えが必要になります。
寝返りができるようになると、ベッドやソファの上から落ちる危険があります。
つかまり立ちが始まると、家具やテレビ台につかまったり、引き出しを開けて足場にしたりすることがあります。
さらに、窓やベランダの近くにソファや椅子、踏み台になる物があると、登って外をのぞき込む可能性も出てきます。
転落・転倒を防ぐために確認したいこと
- 大人用ベッドやソファに子どもを一人で寝かせていないか
- おむつ替え台など高さのある場所で手を離していないか
- 窓やベランダの近くに、登れる家具や物を置いていないか
- 階段や段差に近づける状態になっていないか
- 家具やテレビが倒れないよう固定されているか
- ベビーカーや自転車の座席では、必要なベルトを正しく使用しているか
子どもは、「危ないからやめよう」と判断する前に、興味のある方向へ体を動かします。
注意を繰り返すだけでは防ぎきれないこともあります。
だからこそ、登れる物を置かない、手が届かない位置へ移す、扉を閉める、固定するなど、環境側で危険に近づきにくくすることが大切です。
水のある場所では、短い時間でも目を離さない
家庭の中で水に関わる場所というと、浴室を思い浮かべる方が多いでしょう。
けれど、子どもにとって注意が必要なのは、浴槽だけではありません。
水をためたバケツや洗面器、ビニールプール、洗濯機、庭先の水遊び、外出先の噴水や川など、身近な場所にも危険はあります。
子どもは、浅い水でも姿勢を崩したり、顔が水についた状態から自力で起き上がれなかったりすることがあります。
浴室や水遊びで意識したいこと
- 子どもが入浴中に、大人が目を離さない
- 大人が髪を洗うときには、子どもを浴槽から出す
- 入浴後は浴槽の水を残したままにしない
- 子どもだけで浴室へ入れないようにする
- 水遊び中は、浮き輪などを使っていても大人がそばを離れない
- バケツや洗面器に水をためたまま放置しない
- 海や川で遊ぶ際は、大人が付き添い、必要な安全装備を使用する
「ほんの少し洗濯物を取りに行くだけ」「電話が鳴ったから少し離れるだけ」という短い時間にも、事故は起こり得ます。
水のある場所では、見守りを別のことと同時進行にしないことが大切です。

キッチンと食卓では、やけどの危険を見直す
つかまり立ちや歩き始めの頃になると、子どもの手は思った以上にさまざまな場所へ届くようになります。
テーブルの端に置いた温かい飲み物。
垂れ下がった電気ケトルのコード。
炊飯器から出る蒸気。
床に置いた暖房器具。
調理中の鍋やフライパン。
こうした日常の物が、やけどの原因になることがあります。
やけどを防ぐために確認したいこと
- 温かい飲み物や汁物を、テーブルの端に置いていないか
- テーブルクロスやランチョンマットを子どもが引っ張れる状態になっていないか
- 電気ケトルやポットのコードに手が届かないか
- 炊飯器や加湿器の蒸気に触れられる位置になっていないか
- 調理中に子どもがキッチンへ近づける状態になっていないか
- 暖房器具に直接触れられない工夫ができているか
特に、子どもを抱っこしたまま熱い飲み物や汁物を扱うことは、思わぬ動きでこぼれてしまう危険があります。
育児中は、急いで食事をとったり、抱っこしながら家事をしたりする場面も増えます。
だからこそ、気をつけるだけでなく、熱い物を置く位置や家電の配置そのものを見直すことが安心につながります。
幼児期には、外へ広がる行動範囲にも目を向ける
子どもが歩き、走り、自分で遊びを選ぶようになると、注意したい場面は家の中から外へも広がります。
公園、道路、駐車場、階段、自転車、水辺、花火など、楽しい経験が増える一方で、事故の可能性も変化します。
幼児期の子どもは、興味を持った物へ急に走り出したり、遊びに夢中になって周囲への注意が向きにくくなったりします。
外出や遊びで考えておきたいこと
- 駐車場では子どもだけで歩かせない
- 道路の近くでは手をつなぐ
- 自転車に乗せる際は安全装備を正しく使う
- 水辺では大人が近くで見守る
- 花火や火を使う場面では、大人が安全な距離と扱い方を確認する
- 遊具は年齢や発達に合った使い方を見守る
子どもに危険を教えることは大切です。
同時に、幼児期の子どもが言葉だけですべての危険を避けられるわけではないことも理解しておく必要があります。
大人が近くにいること。
安全な遊び方を一緒に確認すること。
危険な場面に近づきにくい環境を作ること。
それらを重ねながら、子どもの挑戦や遊びを支えていけるとよいですね。
事故予防は「親の注意力」だけに頼らない
子どもの事故の話を読むと、「自分が目を離さないようにしなければ」「もっと注意深くならなければ」と感じるかもしれません。
もちろん、大人の見守りは大切です。
けれど、親も毎日、食事づくり、洗濯、片付け、仕事、きょうだいのお世話、睡眠不足の中で暮らしています。
いつでも完璧に集中し続けることは現実的ではありません。
だからこそ、事故予防は、親の注意力だけに頼るのではなく、事故が起こりにくい環境をあらかじめ作ることが大切です。
たとえば、
- 危険な物は、高い場所や鍵のかかる場所へ移す
- 浴室の扉を閉め、子どもだけで入れないようにする
- 窓の近くに登れる家具を置かない
- 熱い物や家電のコードを手の届かない位置に置く
- 子どもの成長に合わせて、定期的に家の中を見直す
こうした小さな工夫は、親の負担を減らしながら、安全を支える仕組みになります。
「ちゃんと見ていなければ」と自分を追い詰めるのではなく、
「目を離す瞬間があっても、危険が起きにくい家にしておこう」と考えること。
それが、親にも子どもにもやさしい事故予防だと思います。
もし事故が起きたら、迷わず助けを求める
どれだけ気をつけていても、事故や急な体調変化が起きることはあります。
子どもの様子がおかしい、呼吸が苦しそう、意識がない、大きなけがや重いやけどがあるなど、緊急性が高いと感じたときは、ためらわず救急要請を考える必要があります。
休日や夜間に、子どもの症状への対処や受診の判断に迷った場合には、全国共通の**こども医療電話相談「#8000」**で、小児科医師や看護師へ相談できます。利用できる時間帯は都道府県により異なるため、あらかじめ住んでいる地域の案内を確認しておくと安心です。
また、医薬品や洗剤などを誤って飲んだ可能性がある場合は、飲んだ物を確認し、必要に応じて医療機関や中毒事故に関する専門相談窓口へ相談することも大切です。
「これくらいなら大丈夫だろう」と一人で判断するより、心配なときには早めに専門家へ相談してください。
家の中を見直すことは、子どもの成長を喜ぶことでもある
子どもが寝返りをした。
はいはいを始めた。
つかまり立ちをした。
自分で歩けるようになった。
外で元気に遊べるようになった。
その一つひとつは、家族にとってうれしい成長です。
同時に、家の中や暮らしの中で、見直したい場所が増える時期でもあります。
事故予防というと、不安を感じる話のように思えるかもしれません。
けれど本当は、子どもが新しくできるようになったことを受け止め、その成長に合った環境を用意していくことです。
危険をすべてなくすことはできません。
子どもの好奇心を止めることもできません。
だからこそ、知ることから始めて、今の家庭でできることをひとつずつ整えていく。
おやこセレクトでは、これからも、子どもの成長に合わせた暮らしの安全や、親が安心して選択できる情報を丁寧にお届けしていきます。
今日、家の中を少しだけ見回してみませんか。
赤ちゃんの顔まわりに置かれている物。
床に落ちている小さな物。
手が届きそうな熱い物。
水が残った浴室やバケツ。
窓の近くにある家具。
ひとつ気づき、ひとつ整えることが、子どもと家族の安心につながっていきます。
※おやこセレクトが大切にしている考え方については、「おやこセレクトが大切にしたいこと」でも紹介しています。
参考情報について
この記事で扱った事故の分類と予防の基本は、こども家庭庁の「こどもの事故防止ハンドブック」令和8年3月版に基づいています。同ハンドブックでは、就寝時の窒息、誤飲、転落・転倒、水まわり、やけどなど、0〜6歳の発達に応じた事故予防が整理されています。

また、夜間・休日に子どもの症状や受診判断に迷った場合のこども医療電話相談「#8000」は、居住地の相談窓口へつながり、小児科医師・看護師から助言を受けられる仕組みです。相談時間は都道府県ごとに異なります。

誤飲・中毒が疑われる場合の相談窓口として、日本中毒情報センターは一般向けの中毒110番を案内しています。

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